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骨粗鬆症
 「骨折を予防し健やかな生活を」
 日本人の高齢化はかなりのスピードで進行中で今後も高齢者の増加傾向が続くと予想されます。高齢者ほど疾病率が増加することは当然ですが、特に骨、筋には加齢的変化が著明に現れるため高齢者ほど軽度の外力によって骨折が発生します。特に日本人の食生活ではカルシウムが不足しており、骨粗鬆症の率が高いという背景があります。日本での骨粗鬆症患者は1000万人(1996年)と推定されていますが、大腿骨頸部骨折患者は、1987年の全国調査では年間約5万人、1992年では年間約8万人と急速に増加しています。寝たきりになった主な原因のうち約10%が骨折によるもので、骨折を起こした高齢者の一部はそのまま退院できず、これがもとで合併症を起こし死亡することもあります。こうならないためにも第一に骨粗鬆症の予防と治療、第二に骨折の予防、第三に骨折の治療が大切になります。

 骨粗鬆症の予防レベルでは、
 ◆
カルシウム(牛乳、豆腐、チーズ、小魚など)
 ◆
ビタミンD(干ししいたけ、さつまあげ、ぶり、レバーなど)
 ◆
ビタミンK(納豆)
を多く含んだ食事と運動、
日光浴をすれば良いのですが、治療を必要とする方の場合には薬物療法が必要となってきます。高齢者の骨折の発症は骨量が重要なファクターであることは確かですが、骨量が少なくても骨折を予防することは可能です。骨量が少ないからといって悲観することはありません。大量に骨量を増やすことはできませんが、日常生活の中で転倒に気を付けること、転倒しないような家の中での工夫(たとえば、手摺りや滑り止めをつける、段差を少なくする、足元を明るくするなど)により骨折は予防できると考えることが大切です。また、高齢者が骨折を起こさないためには、個人レベルだけではなく、社会全体が環境を見直していかなければならないと思います。たとえば駅や公共施設の階段とか、バスの乗降口などの段差を小さくするとか、転倒予防の配慮が必要なのではないでしょうか。次に、骨折が起こってしまったらおしまいではなく、その時我々整形外科医が最も活躍するわけですが、高齢者が骨折を起こした場合、その治療には、小児、成人とは異なった対応が要求されます。いろいろな合併症を含めた全身的考慮が必要であり、年齢が高いほど、脳血管疾患、心疾患、高血圧、胃腸障害、糖尿病などの合併症が増加し、その一つ一つが全身的予後だけでなく、骨折の治癒にも影響してくるからです。

 高齢者が増加し医療費が年々増加している日本において、骨粗鬆症や骨折を含めた疾患の予防について一人一人が考えて生活を改善し健やかに暮らしていくことが大切ではないでしょうか。

「奥様ジャーナル」に掲載
 
 
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