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振動障害
  「原因工具の使用中止」保温・禁煙 自己管理を
【問い】
 51歳の男性です。朝起きてから、10時頃まで、手足の関節が痛むのです。リウマチ検査では異常なく、整形外科で痛むときに坐薬を使用してはとのこと。夜、使用すると、翌朝は痛みません。仕事が重機運転の毎日です。職業病でしょうか。坐薬を毎日使用してもいいものでしょうか。(南予)
【答え】
 ご相談の内容から、手足の関節が痛む原因は振動障害によるものと思われます。振動障害は、振動工具の長期間使用により生ずる職業病の1つであり、その障害は振動を受ける局所にとどまることなく、末梢(まっしょう)循環障害、末梢神経障害、骨・関節・筋肉などの運動系の障害、中枢神経系(脳と脊髄(せきずい))の障害、自律神経系の障害など多彩な障害を伴います。

 症状としては、手指の冷感・温感・しびれ感、手指の関節痛やこわばり、肘(ひじ)関節痛、腰痛、首、肩こり、頭痛、耳鳴り、めまい、不眠、物忘れ、倦怠(けんたい)感などがあり、重症例では、仕事中や寒冷により手指が特有な蒼白(そうはく)となり、それに冷感やしびれ感、疼痛(とうつう)などの症状を伴う発作(レイノー現象)を起こし、「白ろう病」と呼ばれています。

 原因となる振動源は、チェーンソー、さく岩機などの作業用機具だけでなく、ショベルカー、タイプライター、キーパンチ、サンダー、電動ミシン、バイブレーターなどいろいろなものがあります。そのため、職歴、生活歴、振動工具の種類と使用期間、症状の出現時期やその経過などについて、詳しく主治医に話すことが診断する上で大切なことです。はがきでは朝方の手足の関節痛しか書かれていませんので、ほかにどのような症状があるかわかりませんが、手指のしびれ・関節痛、レイノー現象をきたす疾患は振動障害以外に、慢性関節リウマチ・強皮症などの膠原(こうげん)病、閉塞(へいそく)性動脈疾患、神経炎、血液異常、重金属などの薬物中毒、外傷などたくさんあるため、エックス線検査、血液検査(リウマチ因子など)、尿検査などを行う必要があり、他のどの疾患とも鑑別できてはじめて振動障害と診断されます。

 振動障害の発生機序や病態については、まだ十分に解明されてないため、特異的な治療法はなく、対症療法が行われており、早期に発見し、早期に治療を開始することが必要です。治療法は大きく分けて次の四つになります。

(1) 原因となる振動工具の使用を中止すること。寒冷の曝露(ばくろ)を避けるよう下着、靴下、手袋などの衣類に注意を払い保温に努めること。禁煙など日常生活の中で自己管理をすることが最も大切です。

(2) 理学療法として、ホットパック、運動浴、パラフィン浴、レーザー治療、超短波治療などがあります。

(3) 薬物療法には、一般的に末梢血管拡張剤が使われますが、ほかに筋弛緩(ちかん)剤、ビタミン剤、消炎鎮痛剤なども使われます。ご相談の最後にありました痛み止めの坐薬のことですが、通常は1日1〜2回使用します。しかし、長期の使用により副作用が出現することもありますので、主治医の注意を守って使用し、異常を感じた時は早めに診察を受けるようにしてください。

(4) 外科的療法には、交感神経ブロック、交感神経遮断術、関節障害・神経障害に対する手術があります。

 振動障害の治療には、努力と根気が必要です。治療法の(1)に気をつけ、定期的に受診し、自己管理を行って下さい。

平成8年9月23日付 愛媛新聞「診察室」に掲載
 
 
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