●肩こり
頸椎部疾患の疑い
原因・症状で治療異なる |
【問い】
60歳代の女性です。ずっと肩こりに悩まされています。かなり前から、首がググッと鳴ります。特に後頭部、首、左肩のあたりにこりを感じます。右利きです。左腕付け根が激しく痛み、今も周辺に痛みが残ります。頭をそらしたり、左腕を上げるのはつらいことです。さらに左足股(こ)関節外側に激痛があり、骨には異常ないとのことでした。左手、左足のしびれもあり、肩こりとの関係など気になります。(南予)
|
【答え】
肩こりは、首筋、首の付け根から肩甲骨周辺部にかけてのこわばり感。張った感じ、鈍痛などの入り交じった感覚で、ときには頭痛や吐き気を訴えることもあります。
一般に整形外科では首、肩、腕の痛みや、こり、疲労感や脱力感、手指のしびれや冷感などを訴えるものを総称して頚肩腕(けいけんわん)症候群と呼びますが、その原因は次のように多岐にわたります。
〈肩こりの原因〉
A 特定の疾患と関係のないもの
(1) 過労によるもの
(2) 体形によるもの(なで肩など)
(3) 不良姿勢によるもの
(4) 精神的緊張によるもの
B 二次性のもの(疾患の一症状として認められるもの)
(1) 頸椎(けいつい)疾患によるもの
(2) 頸椎周辺部疾患によるもの(胸郭出口症候群など)
(3) 肩関節周辺疾患によるもの(いわゆる動揺性肩関節など)
(4) 肘(ひじ)、手関節周辺疾患によるもの
(5) 末梢(まっしょう)神経疾患によるもの
(6) 心疾患(狭心症、心筋梗塞=こうそく)などの関連痛によるもの
(7) 歯周辺疾患によるもの(かみ合わせが悪いなど)
(8) 眼精疲労(目の疲れ)
(9) 自律神経失調症
(10) 更年期障害
(11) その他
C 現在なお原因が解明されていないもの
ご質問の方は、肩こりと手のしびれ、頚椎後屈時の疼痛(とうつう)があることから前述の原因の中のB-(1)と(2)が最も疑われますが、これらの中にも数多くの疾患があります。ご質問の内容からだけでは、病気の確定はできませんが、診断の確定には正確な問診と診察を参考にしつつ、患者さんの性格も考慮に入れて慎重に鑑別診断を進めていく必要があります。
診察では、神経学的所見と各種の誘発テストが有用で、多くはその診察所見とエックス線検査、MRI検査で診断可能ですが、血液検査、各種造影検査、電気生理学的検査、心理テストなどの補助診断が必要な場合もあります。
肩こりの原因が何であるかにより治療法も異なってきますので整形外科で診察を受け、適切な治療を受けて下さい。
一般的に肩こりの治療として保存療法では
(1) 物理療法[温熱療法、電気療法、マッサージ、頚椎牽引(けんいん)など]
(2) 運動療法[頚椎周囲筋や肩甲帯周囲筋群の筋力増強訓練など]
(3) 薬物療法[湿布、内服薬(消炎鎮痛薬)、筋弛緩(ちかん)薬など]
(4) 注射療法[圧痛点への注射や神経ブロック]
(5) 装具療法[頚椎装具や各種バンドの装着]
などがありますが、原因やその症状の程度によっては手術療法が必要となることもあります。また、左股関節外側の痛み、左足のしびれについては、腰椎周辺病変の合併も考えられますので、腰部の診察も同時に受けることをお勧めします。
平成14年5月27日付 愛媛新聞「診察室」に掲載
|
 |
|
|
|
 |
|
医療法人 慶士会 金澤整形外科
〒791-1125 愛媛県 松山市 小村町 87-6
Tel:089-963-2399 Fax:089-963-2599
|
|
|